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【エクササイズコラム】それでも僕らが運動を続けられない理由

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この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

「運動は健康にいい」ことは、ほぼ全ての人が理解していると思います。しかし、実際に運動している人はどれくらいいるでしょう。私たちが運動は健康に良いと思いながら、それでも運動できないのは、単に意思が弱いからでしょうか?

今回は少し力を入れて書いているので、お急ぎの方は一番下のまとめだけ呼んでください。

 

どれくらいの人が運動しているか

 

 

世界保健機関(WHO)が2016年に発表した研究結果では、世界14億人が運動不足であり、生活習慣病(心臓疾患、脳卒中、糖尿病、がん、認知症)のリスクが高い状態であると報告されています。

14億人というと、世界の成人人口の約1/4、つまり世界的にも成人の4人に一人が生活習慣病のリスクが高まっていることになります。

ただ、WHOが定める「運動のガイドライン」では、活発なウォーキングなどの中強度の運動を1日30分、成人は週に5日以上行うことを推奨しており、さらに週に2日以上の筋力トレーニングや座りすぎないことも推奨しています。この目標に達していない人を、「運動不足」と定義しているようです。

その調査における日本の結果は、実に3人に1人が運動不足であるとされています。

しかし、このガイドラインのハードルはちょっと高い気がしますよね。

では日本が行なった調査ではどのような結果だったでしょう。

スポーツ庁が平成29年度に行なった世論調査では、「週1日以上定期的な運動やスポーツの習慣がある」成人の割合は、51.5%でした。

反対に、「この 1 年間に運動・スポーツはしなかった」かつ「現在運動・スポーツはしておらず今後もするつもりがない」と答えた方は 20.7%でした。

週1日に運動している人は2人に1人、そして5人に1人は運動するつもりがないと答えています。

 

では、高知県ではどうでしょうか。高知県が平成29年に発表した、「平成 28 年高知県県民健康・栄養調査報告書」から見てみます。

この調査では「週2回以上かつ1回30分以上を1年以上継続している」人を「運動習慣あり」と定義しています。

結果では、男性37.0%、女性29.5%が「運動習慣あり」でした。男性では約63%の人が、女性は約70.5%の方が運動習慣がないという結果になっています。

 

筋トレすれば全ての病気リスクを下げられる

 

 

運動による健康効果は非常に多くのエビデンスがあります。Stamatakisらが2017年に発表した大規模調査では、30歳以上の男女、8万306名を対象に、全原因・癌原因・心血管疾患原因死亡リスクの関連を検討するコホート研究を行いました。

結果は、筋力トレーニングを少しでも行なっているものは、

「全ての病気による死亡率が23%減少」

「がんによる死亡率は31%減少」

という驚くべき結果でした。

さらに、筋力トレーニングはジムなどで行う専門的なものだけではなく、「腕立て伏せ」のような家庭でもできる運動でさえ、ジムに通うのと同じ程度、死亡率を下げることを明らかにしています。

つまり、ジムに通うのが好きな方はジムに通ったらいいし、めんどくさかったりお金がもったいないと思う方は自宅でトレーニングを行う、このいずれも死亡率の減少から見れば同様の効果があるということです。

 

何故、運動は続かないのか。

 

 

ここまで読んですぐに筋トレしようと思った方は、大変素晴らしいと思います。

しかし、どのくらいの人がそれを継続できるでしょう。

ここで、Liebermanによる研究結果をみてみます。

太古の昔、類人猿から進化した人間は、狩猟採集による営みを行なっていました。基本的に人間は、肉食動物よりも足が遅く、また最大速度で走れる時間もごく短時間です。

しかし、自分よりも大きな獲物を狩るために、単独行動ではなく集団で狩りを行うことを習得し、さらに速さでは勝てない動物を持久力で追いかけ回して疲れたところに止めを刺すというスタイルを確立しました。

 

集団で狩りをするメリットは、

①自分よりも大きな獲物を狩る場合、単独で行うより成功率が上がる

②自分が得た獲物でも、仲間に分配することで、自分が狩りに失敗した場合でも食べ物を得るチャンスが増える

というものです。

しかし、この狩猟はチャンスが増えるものの、平均的に走る距離は毎日9km〜15kmであり、狩りは一日のうち4時間〜6時間も費やしていたそうです。

この時食べていた物は、現在のような高カロリー食品ではなく、狩りで得た肉、採集で得た植物や木の実などです。

決して現代人より多くのカロリーを得ていたわけではない約200万年前の人間が、どうやって毎日こんなに長い距離を走ることができたのでしょうか。

それは、怠けることです。

種の保存と生存、つまり生殖活動とエネルギー獲得以外の時間は、無駄なエネルギーを消費しないように進化してきました。

その約200万年前に人類がDNAに刻み込んだ「生きるために怠ける」ことが、現代人の健康を脅かしているとも言えます。

永きに渡る進化の過程で「怠けるようプログラムされた」人間が、ここ数千年程度で変われるはずがありません。

つまり、運動が続かないのは、あなたが悪いのではなく、「そもそも人間は健康のために運動するようにできていない」ためです。

 

なんのために運動するのか

 

 

約200万年前の人類は、「食物を確保するため」、木の実を探したり、狩猟をしていました。

彼らには「健康になるため、運動する」という概念がそもそもありません。ストレスが溜まり、気晴らしにジョギングする狩猟民族は存在しません。

彼らは、健康ではない「目的」のために運動を行なっていました。

では、現代人が運動を続けられるためにはどうすれば良いでしょう。

それは、「健康になること以外を目的にすること」です。

ダイエットしたい、という人がいれば「体重を何キロ落とす」ということを目標にすると、おそらく高確率で失敗します。

なぜなら、体重を落とすことにメリットは感じられないため、目的としては不適切だからです。

適切な目標は「体重を落として着たい服を着られるようになる」

といったものです。これは、200万年前の狩猟採集民族だった人間が行っていた運動の目的と合致します。

「着たい服を着られるようになる」という欲求に対する答えが「運動をすること」だからです。

そして、ダイエットを狩猟として考えるなら、単独での成功確率は低いですよね。

なので、友人や同僚、家族といった協力者が必要になります。

獲物を狩るために1人で走り回るのではなく、集団で走り回りましょう。

そうすることで、成功確率はグンと上がり、その恩恵も自分だけでなく協力者全員にももたらされます。

 

まとめ

長くなりましたので、今回はまとめをつけました。

・運動不足は世界的な問題

・運動が続かないのは、200万年前、狩猟民族だった人間が獲得したエネルギー保存戦略

・「健康になること」を目的ではなく「メリットを感じる」ことを目的としよう

・ダイエットを狩りと例えるなら、1人ではなく複数人で行うと成果が上がる

 

 

参考文献・資料

Globally, 1.4 billion adults at risk of disease from not doing enough physical activity

スポーツ庁:平成29年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」について

平成 28 年高知県県民健康・栄養調査報告書

Stamatakis E,Does Strength-Promoting Exercise Confer Unique Health Benefits? A Pooled Analysis of Data on 11 Population Cohorts With All-Cause, Cancer, and Cardiovascular Mortality Endpoints.

Lieberman,Is Exercise Really Medicine?An Evolutionary Perspective