腰痛を克服する①~原因とRed flag sign~
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腰痛を感じている、または腰痛になったことがある。そのような経験がある方はどのくらいいるかご存知ですか?
腰痛はほとんどの人が経験する
腰痛はおよそ85%の人が経験しているという研究結果が出ています。期間や程度は別として、ほとんどの人が腰痛を経験していると言えます。
ですが、例えば1日や2日、軽く腰が痛い程度であればそこまで気にすることはなく、積極的に治療しようとは考えないかもしれません。
しかし、厚生労働省の調査によれば、「4日以上の休業を必要とした業務上の疾病」の65%が腰痛によるものと結果が出ています。
僕の周りにも腰痛や肩こりを持ちながら働いている方がおり、しかもそれがパフォーマンスの低下を招いているという自覚がありました。その方々に「何故、病院に行ったり整体に行ったり、治そうとしないの?」と聞いてみました。返ってきた返事は
「病院や整体に通う時間もお金もない」
「前に行ったことがあるけど、治らなかった」
「病院に行くほど重症じゃないと思ってる」
などでした。
腰痛は対処方法を間違えると悪化する可能性があります。腰痛に対するちゃんとした知識を身に付けることが、最善の治療方法と言えるかもしれません。
腰痛と企業に与える損失
腰痛は個人の問題であり、自分が働いている企業には関係ない。また、社員の腰痛なんかうちの会社には関係ない。そんな事を考えていませんか?
実は、社員の腰痛が企業における損失になっているかもしれません。
何らかの理由により不調となり、出勤はしているものの十分なパフォーマンスが出し切れていない状態を「プレゼンティーイズム」と言います。このプレゼンティーイズムは別記事をご参照ください。
このように、個人の健康の問題であるはずの腰痛が、実は企業にとって損失となっている場合があります。もはや、従業員における腰痛は個人任せにしてはならないような時代になってきています。
腰痛の原因は?
腰痛の原因には、大きく3つに区分することができます。
神経性腰痛(画像所見あり)
筋肉性腰痛(画像所見なし)
心因性腰痛(画像所見なし)
です。
神経性腰痛には、
腰椎椎間板ヘルニア
変形性脊椎症
腰椎分離症・すべり症
脊柱管狭窄症
などなどがあります。
筋肉性腰痛は
筋・筋膜性腰痛症
があります。
心因性腰痛には
ストレス性腰痛
があります。
上記を見ると、神経性腰痛が最も種類が多く、かつ画像所見もあるため、「腰痛はレントゲンやMRIなどで検査するのが原因もわかるし、一番だ!」と思うかもしれません。では、以下の図をご覧ください。
この図をご覧頂くとわかると思いますが、腰痛のために病院を受診しても、約85%が原因を特定しきれないというのが現実です。そして、この原因を特定しきれない腰痛が、筋肉性腰痛と心因性腰痛です。
しかしながら、原因がわかる腰痛か、わからない腰痛かは病院に行かないと判断できません。では、どのレベルの腰痛なら受診した方がいいのでしょうか?
こんな腰痛は即病院へ!
腰痛におけるトリアージ(段階付け)には3段階あります。
- Red flag sign :重篤な疾患の可能性のある腰痛
- Yellow flag sign:慢性腰痛、休職、長期の活動性低下へ移行する可能性がある腰痛
- Green light :非特異的腰痛ともいわれ、神経学的異常や器質的異常のない予後良好な腰痛
既にお分かりだと思いますが、このRed flag signが即病院に行くべき腰痛です。
このRed flag signを細かく書き出すと、以下のような状態が当てはまります。
- 内科的疾患(発熱、臓器の炎症、腹部大動脈瘤、腎症状、その他)
- 1カ月以上続く腰痛
- 夜間の安静時痛(寝返り時は除く)
- 50歳以上は癌、70歳以上は圧迫骨折の頻度が高い
- 癌の既往
- 説明できない体重減少
- 脊椎の叩打痛(たたいて痛いか)
- 発熱、細菌感染
- 外傷の既往
- 馬尾神経圧迫症状(トイレの頻度が多いまたは極端に少なくなった、失敗がある)
- ステロイドを使用している
これらに当てはまる場合は、すぐに病院に行くことをお勧めします。腰痛のうち、原因が特定しきれないものがほとんどと言っても、約15%は原因がある腰痛です。その15%の腰痛を見過ごしてしまうと、重篤な状態に悪化する可能性があります。
ここまでのまとめ
ほとんどの人が経験する腰痛。しかもそのうち85%は原因が特定しきれず、長期化する事があり、腰痛があるために知らず知らずのうちに企業は損失を生んでいる可能性があります。
次回からは腰痛に対する対処方法について記していきたいと思います。
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