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企業の大きな損失、「プレゼンティーイズム」とは?

2019年7月25日

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現代において、社会保障である医療費は年々増加の一途を辿っています。企業はその医療費の一部を負担しなければならず、医療費の増加は企業負担の増加となっております。

また、保険料を納付している生産年齢人口が減少しており、少ない人員で業務をこなすための残業時間の延長見られております。しかし、最近のニュースでも「過労自殺」が見られるよう、これは労働者の精神的・肉体的な健康状態の悪化を招きます。

「プレゼンティーイズム」とは?

精神・身体面の不調により会社を欠勤することを「アブセンティーイズム」といいます。アブセンティーイズムは勤怠状況などにより、客観的に把握しやすく、これにより企業にとって損失が起きていることはわかりやすいです。

しかし、アブセンティーイズムが企業にもたらす損失はそれほど大きなものではなく、むしろ、出勤している方の生産性が低下することが、企業にとって大きな損失を招きます。

以下に、厚生労働省保険局がまとめた、米国商工会議所調査における従業員の健康関連コストの全体構造の図を示します。

 

この図を見ると、アブセンティーイズムは大きな割合を占めてはおらず、一番大きな割合を占めているのは「プレゼンティーイズム」だということがわかります。

この、プレゼンティーイズムとは、従業員が出勤しているのにも関わらず、種々の身体・精神の不調があり、生産性の低下をきたしている状態のことを言います。

また、米国は群を抜いて世界で一番医療費が高い国です。風邪をひいても病院にかかれず、亡くなる方がいるほどです。その国の調査でさえ、健康関連コストの大部分を占めているのは医療費ではなく、プレゼンティーイズムだったのです。

日本人は、「勤勉は美徳」と考える方が非常に多くいます。ある調査によれば、風邪などによって発熱して、会社を休む判断をした体温は平均で37.9度程度だったそうです。つまり、日本人は38度以下の発熱であれば出勤する人が多いということです。しかし、これが企業に大きな損失を招くことになります。そのような状態で出勤しても、確実にパフォーマンスは低下しています。そして、その発熱の原因が感染性のものだったらどうでしょう?

もしも、インフルエンザに気づかず出勤してしまった場合、社内中にインフルエンザウィルスを蔓延させることになります。そうすると、プレゼンティーイズムの問題は個人だけでは収まりません。その人の周囲の従業員まで、罹患のリスクは高まり、新たなプレゼンティーイズムの発生を招きます。

例えば、何かしらの体調不良があり、生産性が70%に低下したまま5日間、8時間働いた方と、一日休んで体調を整え、100%の状態で4日間働いた方がいるとします。

 

0.7×5(日)×8(時間)=28(時間分の仕事)

1.0×4(日)×8(時間)=32(時間分の仕事)

 

体調不良を抱えたまま仕事をした人より、休んだ人のほうが4時間も仕事をした結果が得られることがわかりました。

日本人は責任感が強く、「自分が休んだら周りに迷惑がかかるから」と考える方が多いです。実際、僕自身もそうです。ですが、体調不良のまま出勤することのほうが、周囲に迷惑をかける可能性があることも、知っておいたほうがいいかもしれません。

「プレゼンティーイズム」を減らすには?

近年、「健康経営」や「健康投資」という言葉が多く使われるようになりました。これは、上記のプレゼンティーイズムが企業にとって大きな損失になっていることが分かり始めた結果だと考えます。

では、プレゼンティーイズムを減らしていくにはどうすればいいのでしょうか?

国内の就業者6777人に対し行われた調査では、身体における種々の不調で、最も大きな損失を招いているのは18-29歳では不安やうつ・意欲障害であり、30歳-59歳では首や背中の痛みということがわかっています。しかし、18-29歳もプレゼンティーイズムを招く疾患の第2位が首・背中の痛みであり、30歳-59歳の第2位は不安やうつ・意欲障害です。このふたつの問題が大きなプレゼンティーイズムの大きなウェイトを占めていることがわかりました。この2つのプレゼンティーイズムが招いた損失の合計は、

100人あたり首や背中の痛み=86419 US$

100人あたりうつや不安・意欲障害=66625 US$

 首や背中の痛みは一人あたり864$、うつや不安・意欲障害は666$の損失を招いています。これらに対する対策が、大きなプレゼンティーイズムを減少させることにつながるのではないでしょうか。

後に

これらの問題は、従業員だけの努力でも、企業だけの努力でも解決しません。従業員と企業が一丸となり、プレゼンティーイズムは大きな損失を招いているという共通の認識の下、労働環境や働き方といったハード面、従業員個人のカラダに関するソフト面のアプローチが必要となります。

そして、プレゼンティーイズムを引き起こす身体の種々の不調は、従業員の家族が原因の場合もあります。家族の介護や看護、家庭環境など…。そういった、従業員を取り囲む環境への取り組みも、今後必要になってくると考えております。もはや、産業と医療・介護は全く別分野ではなくなってきており、包括的な取り組みが必要と思われます。